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ブラジルで現地法人なしに営業マンを雇う|PJ契約の落とし穴とCLT雇用のコスト

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ブラジルで現地法人なしに営業マンを雇う|PJ契約の落とし穴とCLT雇用のコスト
著者INS Global
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ブラジルで現地法人を設立する前に、まず営業マン(営業担当者)を1名置いて市場の手応えを確かめたい。中南米最大の経済規模を持つブラジル、とりわけ産業と資本が集中するサンパウロを狙う日本企業から、こうした相談が増えています。

ただしブラジルは、労働者保護が手厚く、雇用形態の判断も厳格な市場です。本記事では、現地法人なしで営業担当者を採用する際に避けて通れない「PJ契約(個人事業主契約)のリスク」と、CLT(統合労働法)に基づく正規雇用で発生する法定コスト、そして固定給とコミッションを組み合わせた報酬設計の考え方を、実務目線で整理します。

サンパウロに「最初の1人」を置く意味

ブラジルの人口は2億人を超え、製造業、農業、金融、ITのいずれも中南米で突出した規模を持ちます。その中心がサンパウロ州で、大手企業の本社、購買部門、業界団体、展示会の多くがここに集まります。日本から出張ベースで商談を重ねるだけでは、ポルトガル語での継続的なフォロー、現地の商習慣に沿った関係づくり、競合の値付けや入札情報の把握がどうしても追いつきません。

一方、現地法人の設立には、CNPJ(法人納税者番号)の取得、定款の登記、会計・税務体制の整備、外国人役員や代理人の選任などが必要で、準備から稼働までに長い期間を要するのが一般的です。売上の見通しが立つ前に固定費を抱えることになるため、まずは営業担当者1名で需要を検証し、成果が見えてから法人化を判断する段階的な進め方が合理的です。

法人がなければ直接雇用はできない。では個人事業主契約は?

ブラジルで従業員を雇用するには、雇用主としての登録と、eSocial(労務・社会保険の電子申告システム)を通じた各種申告が求められます。現地に法人格を持たない日本企業がブラジル居住者を直接雇用し、給与を支払い、社会保険に加入させることは、実務上できません。

そこで検討されがちなのが、営業担当者に個人事業主として法人(PJ)を作ってもらい、業務委託契約を結ぶ方法です。現地では「ペジョチザソン(pejotização)」と呼ばれ、労働裁判で繰り返し争点になってきました。

偽装請負と判断されやすいポイント

  • 日本本社が売上目標や訪問件数を指示し、定期的な報告を求めている
  • 勤務時間や稼働日が実質的に決められている
  • 本人以外が業務を代行できない(人的従属性)
  • 毎月ほぼ一定額の報酬が継続的に支払われている

営業担当者は日本側が指揮命令する前提で採用されることが多く、上記の要素を満たしやすい職種です。雇用関係と認定されれば、過去にさかのぼって13か月目給与、休暇手当、FGTS(勤続期間保障基金)とその罰金、社会保険料の支払いを求められる可能性があります。さらに、現地で継続的に契約交渉を行う人がいることで、日本企業自体の課税関係が問題になる場面もあります。短期的な手軽さと引き換えに、あとから大きな負担を抱えかねない点は押さえておくべきでしょう。

CLT雇用で発生する営業担当者の法定コスト

雇用代行(EOR)を使う場合、EORが現地の雇用主となり、営業担当者はCLTに基づく正規雇用として扱われます。日本企業は日々の業務指示を行い、雇用に伴う法定手続きと費用精算はEORが引き受けます。予算策定の段階で、月給以外に次のような項目を見込んでおくことが重要です。

  • 13か月目給与(13º salário):年に1か月分の追加給与。通常、年末にかけて2回に分けて支払います。
  • 休暇と3分の1加算:年30日の有給休暇に加え、休暇時には給与の3分の1が上乗せされます(憲法上の休暇手当)。
  • FGTS:給与の8%を毎月、従業員名義の口座に事業主が積み立てます。
  • INSS事業主負担:社会保険料として給与の20%が基本で、労災保険(RAT)や第三者機関向けの負担金が加わります。
  • 福利厚生:通勤手当(vale-transporte)は法定で、食事補助や医療保険も営業職の採用競争では事実上の標準です。

このため、事業主の総コストは額面の月給を大きく上回ります。予算は「年収×一定の係数」で概算し、職種と都市に合わせてEORに試算を依頼するのが確実です。

固定給+コミッションをどう組み立てるか

営業担当者には成果連動の報酬を組み込みたいところですが、ブラジルではコミッションも給与の一部とみなされ、各種法定項目の計算基礎に入ります。特に見落とされやすいのが、週休日の有給(DSR)への反映です。コミッションを支払う場合、その額に応じたDSR相当分を別途上乗せする必要があります。

営業担当者の報酬設計(固定給+コミッション)と法定コスト

報酬項目主な内容設計・コスト面のポイント
固定給毎月定額で支払う基本給コミッション中心でも最低賃金以上の保障が必要。職種の相場を踏まえて設定
コミッション売上や粗利に連動する変動給算定ルールと支払時期を雇用契約に明記。一方的な引き下げは争いになりやすい
DSR反映分コミッションに対応する週休日の有給コミッション額に比例して追加発生。給与明細上も区分して表示
13か月目給与年1か月分の追加給与固定給だけでなく、一定期間のコミッション平均も算定に含める
休暇手当休暇中の給与と3分の1加算同様にコミッションの平均を反映。繁忙期の休暇取得計画も重要
FGTS・INSS積立金と社会保険料コミッションを含む総支給額に対して計算されるため、変動給が増えるほど負担も増える

つまり、コミッション比率を高めても法定コストは比例して増えます。固定給で生活の安定を担保し、コミッションは四半期ごとの目標達成度に連動させるなど、採用競争力と予算管理を両立させる設計がおすすめです。

業種別に見る、営業担当者が成果を出しやすい分野

  • 農業機械:穀物や畜産の大規模生産者が多く、マット・グロッソ州やパラナ州などの農業地帯を回るフィールド営業が効果的です。ディーラー網の開拓も営業担当者の重要な役割になります。
  • 医療機器:病院グループや代理店との関係構築に時間がかかる分野で、臨床現場を理解した営業担当者の存在が信頼につながります。
  • 工業部品:サンパウロ州には自動車や機械メーカーの工場が集積しており、技術資料をもとに提案できる営業担当者が重宝されます。
  • SaaS:サンパウロはスタートアップと投資が集まるデジタル市場です。ポルトガル語でのデモやカスタマーサクセスを担える人材がいるかどうかで、商談の進み方が大きく変わります。

ブラジル人材の働き方やリモート勤務の実情はブラジル企業でのリモートワークでも紹介しています。また、海外での営業人材採用でつまずきやすい点は海外採用で日本企業にありがちな失敗とは?が参考になります。

INS Globalがブラジルでの営業体制づくりを支える

INS Globalは20年以上の実績を持ち、160以上の国と地域で雇用代行(EOR)、給与計算、採用支援を提供しています。上海をはじめ各地に拠点を構え、日本語での対応も可能です。ブラジルでは、CLTに沿った雇用契約書の作成、eSocialへの登録、13か月目給与やコミッションのDSR反映を含む給与計算、社会保険の手続きまでを一括で引き受けます。

候補者がまだ決まっていない場合も、採用支援(人材紹介)サービスを通じて、業界経験とポルトガル語での営業力を備えた人材の募集から選考までをサポートします。サービス全体の概要は雇用代行(EOR)サービス、ブラジル固有の条件はブラジルの雇用代行(EOR)サービスをご覧ください。市場の基礎情報はJETRO(日本貿易振興機構)のブラジル情報にまとまっています。

ブラジル営業の第一歩について相談する

PJ契約で急いで始めるより、最初からCLT雇用で営業担当者を迎えるほうが、長く安心して市場開拓を続けられます。報酬設計の試算や候補者探しの段階からでも構いません。お問い合わせフォームから、ブラジルでの営業体制についてお気軽にご相談ください。

よくある質問

Q. ブラジルでEORを使うと、営業担当者の採用から勤務開始までどのくらいかかりますか?

候補者が決まっていれば、雇用条件の確定、雇用契約の締結、eSocialへの登録などを経て、数週間程度で勤務開始できるのが一般的です。候補者探しから始める場合は、採用活動の期間が加わります。

Q. すでにPJ契約で働いている営業担当者を、EORでの雇用に切り替えられますか?

可能です。業務実態が雇用に近い場合は、早めにCLT雇用へ移行することで将来の紛争リスクを抑えやすくなります。移行時の報酬水準や勤続の扱いは、個別に条件を整理したうえで決定します。

Q. コミッションだけの報酬体系にすることはできますか?

ブラジルではコミッション中心の報酬でも、最低賃金以上の支給を保障する必要があります。また、コミッションは13か月目給与、休暇手当、FGTS、DSRの計算に含まれるため、固定給と組み合わせた設計が現実的です。

Q. 営業担当者がサンパウロ以外の州に住んでいても雇用できますか?

雇用できます。ブラジル国内の居住地に応じて、祝日や一部の手続きが異なる場合がありますが、EORが勤務地に合わせて雇用契約と給与計算を整えます。農業機械など地方を回る営業職でも対応可能です。

Q. 将来ブラジルに現地法人を設立した場合、営業担当者はどうなりますか?

法人設立後に、EORで雇用していた営業担当者を自社法人へ転籍させることができます。顧客との関係や業務の継続性を保ちながら移行できるため、EORは法人化までのつなぎとしても活用されています。